法務局に備付けられている,地図や地図に準ずる図面に記録されている地番と地番との境をいいます。
既に登記されている土地であれば,土地を分けた(分筆)線が地番境で筆界(ふでかい)と言います。
不動産登記法第123条
表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において, 当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた2以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
現実には,直線だけでなく曲線も筆界として存在します。

筆界という用語は,「ふでかい」「ひっかい」「ひつかい」などと呼ばれていますが,この用語は,裁判上,占有界(所有権界=私的な境界)と固有の境界(筆界=公法上の境界)とを峻別する必要性から使用されたものです。また,合意境界とは,隣接土地所有者の双方が,私的に合意した境界=所有権界のことです。

江戸時代の幕藩体制の下においては,今でいう所有権という概念は存在せず,領主の土地を借りて耕作する小作権にすぎませんでした。
明治政府になり,国家繁栄のためには,気候変動によって増減する年貢よりも,金納のほうが予算を組みやすいので,国が国民に対して土地所有権を認め(地券発行),国民は,その所有権が認められた土地の範囲内で土地を利用し,税金を納めたのです。
国が国民から税金を徴収するには,課税する土地の広さを把握するために測量し図面を作成(この時に測量した土地には山林原野は含まれていないようです。金を生まない山など測量しても意味がなかったのでしょうか。指三本立てて,あっちからこっちみたいに目測したらしいです)し,図面が出来上がったら土地に地番を付け,土地台帳に,土地の広さ(畝反町),土地の評価(田・畑)と課税評価(地価),課税価格(地租)を決定したのです。
作成された図面に墨で書かれた線が筆界です(原始筆界)。この時に,所有権界と筆界は一致しているのです。
その後,分筆登記が申請されれば,公図に分筆線が記入されます(後発的筆界)。
分筆登記の申請をせず,当事者同士が,合意の基にブロック塀を工作又は境界標を設置したとしても,現地においては,明確な境界が表示されますが,公図には筆界が表示されません。

我が町調布市内には,この明治時代に作られた図面(旧土地台帳付属地図)が,いまだに公文書として法務局に備え付けられており,取引において参考図面として使用されます。
目的の土地の公図(地図に準ずる図面)を取得すると,欄内には,土地の所在・地番・縮尺・分類・種類が記載されています。
地図に準ずる図面とは,不動産登記法第14条第4項に条文があるのですが,土地の位置,形状及び地番が表示され,その土地の区画は明確ではありません。
種類に関しては,上記のように,土地台帳作成時に作られた図面,つまり,旧土地台帳付属地図と記載されています。

区画整理や耕地整理,震災・戦災復興によって作成された公図もあります。
これらの公図も,法第14条第4項の地図に準ずる図面ですが,地方自治体が,その基になる測量図を保管している場合があります。

土地の表示に関する登記の現地調査で最も重要なことは,元々の位置にあるべき固有の筆界を示す唯一の資料である公図と,現地の状況を表す地積測量図など図面関係との照合調査です。
公図が示す筆界を確認するとは,地積測量図や申告図面等の図面類を収集し,現地において,物理的な状況を客観的に公正に調査・測量するのです。
公図に対して増減歩率を算出し,航空写真に写りこんでいる地類界を現地に反映させることも必要な作業です。
公図の持つ効力について,その作成経緯や歴史的経緯を調査・探求もせずにして,「公図は明治時代に農民が作ったものだからいい加減な地図である。」などと決め付けるものではない。
すなわち,現地の構造物(柵)や境界標(目印)だけでは,地積更正の登記原因である「錯誤」の根拠が証明できません。「錯誤」とは誤りです。
公図の証明力については,距離・角度・方位・地積といった定量的・数値的な面について証明力はないが,隣接土地との位置関係や,筆界が直線か屈曲線か又はその方向という定性的な面についてはかなり信用性がある,というのが裁判例で多く見られます。

依頼された土地のみを測量しただけでは,筆界を調査し確認したことにならない場合があります。
すなわち,所有権界と筆界が当初は一致していたが,土地の利用状況や土地所有者の合意等によって,新たに所有権界又は占有界を作り,筆界と所有権界が齟齬している土地も多く存在します。

地番配列,登記簿面積との比較,その土地の生い立ち(沿革)等,調査すべき事項は多くあるにも拘らず,納期と予算に追われ,依頼された対象地のみを調査・測量してはならない。土地家屋調査士法第23条(虚偽の調査,測量の禁止)に該当しないよう,調査の公正義務は果たすべきです。