土地家屋調査士とは,法務省の国家資格で不動産(土地・建物)の所有者の代わりに,表示に関する登記の申請を行う資格者です。
表示に関する登記は,分かりやすく説明すると,土地・建物がどこにあって,土地の広さや建物の大きさ等を登記簿に記す登記です。
不動産がどこにあって,誰が所有者でどんな不動産なのかを分かるようにしないと,売ったり買ったりするのに不安になりますよね。
このように,登記簿の初めに記載されている事項の登録申請を行います。
そして,土地家屋調査士は調査・測量・登記のスペシャリストです。
つまり,測量ができる技術者であり法律家でもあります。
登記申請の為に行う測量や境界の確認(立会い)は測量士では出来ません。
土地家屋調査士はみなさまの大切な不動産を守るための専門家なのです。

詳しくは東京土地家屋調査士会のホームページをご覧ください。
        
土地家屋調査士の業務はお分かり頂けましたでしょうか?
条文を交えて詳しく説明しましょう。
不動産という重要な財産を,売買等の取引や相続をする時に,正確に,かつ速やかにその不動産の情報を法務局に公示させる,とても重要な業務を行う資格者なのです。
さらに,登記簿の表題部に記載された情報が,皆様の固定資産税にも反映されます。
すなわち,その業務に関しては,極めて公正な立場で業務を行わなければなりません。

不動産登記法第1条(目的)
この法律は,不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めたことにより,国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。


土地家屋調査士倫理綱領

1.使命
  不動産に係る権利の明確化を期し、国民の信頼に応える。
2.公正
  品位を保持し、公正な立場で誠実に業務を行う。
3.研鑽
  専門分野の知識と技術の向上を図る。

土地家屋調査士は,不動産登記法や土地家屋調査士法だけではなく,上記倫理綱領及び日本土地家屋調査士会連合会が定めた倫理規定,並びに各都道府県の単位会が定めた会則を遵守し,国民の大切な財産である不動産に対して,安全・安心な財産であるという保険を与える資格者なのです。

土地家屋調査士法第3条(業務)
調査士は,他人の依頼を受けて,次に掲げる事務を行うことを業とする。
1 不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量。

すなわち,非土地家屋調査士である測量会社等が,表示に関する調査又は測量を行うことはできない。

以下の条文にあるとおり,土地家屋調査士としての職責は非常に重い。

土地家屋調査士法第44条(懲戒の手続)
何人も,調査士又は調査士法人にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは,当該調査士又は調査士法人の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に対し,当該事実を通知し,適当な措置をとることを求めることができる。

土地家屋調査士法施行規則第22条(他人による業務取扱いの禁止)
調査士は,他人をしてその業務を取り扱わせてはならない。

懲戒処分事例集を参照すると,土地家屋調査士本人が業務を行わずに,自身が経営する測量会社の社員に,受託した事件の全てを任せきりにしてはならない,という意味です。


土地家屋調査士法施行規則第24条(依頼誘致の禁止)
調査士は,不当な手段によって依頼を誘致するような行為をしてはならない。

公正な業務に対しての資格者であるので,得意先との業務結託を禁止しています。
すなわち,依頼された事件に対してのキャッシュバックを禁止させ,土地家屋調査士に公正な判断をせよ,と命じているのです。
依頼者の主張に沿い,又は隣接土地所有者との合意点をもって,筆界を確認し,地積測量図を作成している業務方法は公正ではないということです。

土地家屋調査士法を読んでみると,その職業倫理を保つ為に,懲戒事項の条文が多数存在します。
土地家屋調査士が行う調査・測量業務において,一番重要な,そして多くの時間を費やすのが,調査業務における筆界復元手法及び筆界確認の方法です。
測量する作業自体は,近年の技術革新によって,一昔前よりも労力を注ぐことはありません。
土地家屋調査士と測量士の違いについてよく問われるのですが,土地家屋調査士法と測量法という法理論の違いだけでなく,「筆界復元手法及び筆界確認の方法」の専門家が土地家屋調査士なのです。
すなわち,現地に存在する構造物(現況)により土地の境界を確定するのか,それとも,その土地が生成された当初から存在している「筆界」を現地に再現(復元)させ確定させるのかの相違です。
筆界特定申請において,測量士が代理人になることが不可能であり,かつ,筆界調査員に任命されるのが困難なのは上記の理由からだと思います。

私見でありますが,土地家屋調査士でもあり測量会社を経営している者は,土地家屋調査士業務と測量業とを厳格に区別すべきでしょう。
表示に関する登記申請の為の調査測量業務は,土地家屋調査士法3条業務であるからです。
分筆前の境界(筆界)を確定する測量を業として行うのであれば,土地家屋調査士として受託し,報酬額の提示については測量会社名ですべきではない。
土地家屋調査士の資格は,自然人に与えられたものであり,測量会社という営利法人に与えられた資格ではないのです。法人から自然人である土地家屋調査士に対して,役員報酬,給与の支払いを受ける行為は,名義貸しを禁止している土地家屋調査士法施行規則第22条(他人による業務の取扱いに)該当すると判断した懲戒処分事例も存在しています。
土地家屋調査士自身が測量会社を設立し,その測量会社の代表となること自体は違法ではないが,測量会社の業務に,表示に関する登記及びそれに必要な調査・測量を行ってはならない。
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